空気時計を見詰めながら

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zoom RSS 詩集「空気時計を見詰めながら」−3

<<   作成日時 : 2004/10/03 20:15   >>

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     【白きものよ】

原点は去来の為にあるのか 居留の為にあるのか
呟きの後 雨は振り 雨の中へ 呟きは潰え去った

街路樹は 久方の潤いに
幾許かの疲労を洗い流すのに
窓の内なる僕の掌には 虚無の砂漠
(全ての雨は白きものの化身なのか)

これまで めくられたページは
読み進むほどに その厚みを増し
これから めくられるページは
読み入るほどに その意味を増す

僕は唯一の読者を失い 作者であることを捨てて
吹き来る風を憧憬し 吹く去る風に彷徨した
吹き来る風は 瞬時に吹き去る風となったから

去来する水平線に 行き暮れる地平線
原稿用紙の海に没する夕陽を
何度も朝日につなぎながらも
やはり夕陽をむかえてしまう

行き着けば 麦畑 僕も窓の外なる人になる
行き付けば 麦畑 僕も窓の内なる者を捨てて

放棄された覚醒
永劫の睡眠 永劫の麦秋
人の道 逃れて遠く佇む少年を
時空の客観超えて追ってきた僕

僕もまた 人の道逃れて遠く
麦畑に佇みながら
少年の背中を凝視する
僕もまた 誰かに背を向けて

少年の呟き 自問自答のモノローグ
僕は少年の呟きに聞き入る
(キャッシュで払おうか?)
(ママの眠れるお薬で?)

(ボク 生きていたいけど
 生きるって やがて死ぬことさ
 そうだよ・・・眠るってことは 
 死ぬことの分割払いだからね)

(眠らなければ いいんだけど
 でも ボク すぐに
 眠くなるんだ・・・この人生)

(ママの眠れるお薬で払ったよ
 分割払いじゃ 利子がつくもの
 キャッシュで払って そして
 もう一度 ボク 生まれよう)

少年は振り返る 僕の方を
少年は黙殺する その瞳の奥底で
少年は見ている 延長線上の自分を
少年は指摘する 分割払いの僕を

(ボクの背中 見詰めていましたね
 ボクの呟き 聞いていましたね
 太郎は太郎の辞書を持ち
 花子は花子の辞書を持つという事実を)

(ボクの背中にも それはなく
 ボクの呟きにも すでになく
 ただ白きものへの矢印だけが
 行き場なくして ここに佇む)

(ボク 気付いてしまった
 ボク 傀儡師なんだって
 そして 花子はマリオネット)

(人が人の心 操れるなって
 個性の潜水艦じゃないか
 個性は気球に乗るべきなのに)

(泣けもしないのに 涙涸らしたよ
 辞書を捨てたよ 言葉も捨てたよ
 沈黙こそが 語るべきそれだから)

(辞書を捨てても 言葉を捨てても
 道はあったんだ こんなボクでも
 そこを歩めば そこが道になるから)

振り返った少年の視線を追った僕
そこには白きものがいた
彼は僕が今までそうしていたと同じく
僕の背中を凝視していたに違いなかった

前世と来世の狭間に現世はあった

            ※

お前との出会いは 人の道逃れて遠き麦畑
花一輪 咲いてまた散る人の世に
出会うことなき三世の僕 一堂に会して
在来無二 慈愛の教えに振り向いたとき

39度の高熱に三日三晩うなされて
ついに血を吐くにいたって
全てを許せ 全てを許せなければ
自分も許されないと告げられたとき

白きものは 僕の上に振り積み
僕の熱を取り去っていった
白きものは 僕の下にも振り積み
僕の新たなる大地となった

            ※

白きものよ 大地に降り積もりし
白きものよ その胸も熱く語れよ
白くもなれず 積もりもせず
海へと散っていった あの桜花たちのことを

白きものよ 大地に息吹く生命に
白きものよ その胸も熱く伝えよ
白くもなれず 積もりもせず
空へと召していった あの若者たちのことを

白きものよ 今は白きものよ
やがて消えゆく 白きものよ
心静かに祈るのだ

白きものよ お前の輪廻がまた到るまで
白きものよ お前の因果がまた巡るまで
白きものよ 心静かに祈るのだ

            ※

いわば それは夢 夢はいまだ覚めぬ現(うつつ)
辿れば それは現 現はすでに冷めた夢

いわば それは夢 過ぎてしまえばそれまでの現
辿れば それは現 過ぎてしまうまでの空しき夢

白きものよ お前の祈りとは裏腹に
白きものよ 僕もまた桜花の如くに
散らぬ術なき花なのだ

野辺に咲く一輪の花を
手折るも 遠くで見守るも
それは花をめでること
それに変わりはないはずなのに

散ったしまった花ばかりが
僕にはいとしいのだ
去ることもなく 来ることもなく
そうして一生を終える花が

どうせ散ってしまうならば
手折ってしまえと
自分の花瓶に生けてしまえと
白きものよ お前も僕に言うのか

白きものよ お前を見るたび ふと思う
昨日までの明日を 明日からの昨日を
そうした時の流れの中で
お前がそう呼ばれ始める ずっと以前から
僕はお前を知っていたし
  お前を忘れはしたが あの日
髪を伸ばし続けた少女は坂道の途中で
あんなに大事にしていた鞠を手放したのだ

坂道を転がりだした鞠を見てはじめて少女は
その鞠がかけがえもない
最後の玩具であったことに気付き駆け出した
加速する一方の鞠を追って あの日

白きものよ あの日からお前は
白きものよ その白さゆえに狂おしく
白く 白き 白の 白い 白さの中で
その白さゆえに狂おしく
いまだに鞠を追いかけ続けているのか

僕は知っている あの鞠がどうなったかを
        いま 何処にあるのかも
あの日 坂道の下で僕は見ていたのだ
白きものよ お前は転がる鞠に追いついて
あんなにしっかり抱きしめたじゃないか

僕は見ていた あの日のお前を
鞠を追って小走りに坂道を駆けてきた
あの日のお前を 僕は見ていた
この現実の世界で あの日のお前を

いわば それは夢 夢は現実にすべき理想
辿れば それは現 現は理想のキャンバス

白きものよ やがて春がきて
白くなくなるお前の為に
僕は今プレリュードを奏でよう
こうしてプレリュードを奏でよう

白きものよ その日が来るまで
      忘れてはいけない
雨は 最初から雨として降るのではなく
それは白きものとして降るだということを

白きものよ その日が来るまで
お前は落ちる場所を選ばずに降る雪だ
お前は落ちる場所を選べずに降る雪だ

白きものよ その日が来るまで
白きものよ お前にできることは
降ることだけ 落ちることだけ
白きものよ この大地に向かって・・・

■詩集「空気時計を見詰めながら」−1
http://jinojin.at.webry.info/200410/article_8.html
【プロローグ(天空の砂時計)】

■詩集「空気時計を見詰めながら」−2
http://jinojin.at.webry.info/200410/article_7.html
【白きものよ 序章】

■詩集「空気時計を見詰めながら」−3
http://jinojin.at.webry.info/200410/article_6.html
【白きものよ】

■詩集「空気時計を見詰めながら」−4
http://jinojin.at.webry.info/200410/article_5.html
【白砂の砂時計】

■詩集「空気時計を見詰めながら」―5
http://jinojin.at.webry.info/200410/article_4.html
【エピローグ】

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