不等辺デルタ


「寂しい性分ね。」
環がポツりと言った

「この一人部屋のことよ。
 眠れないのよね。他人が横にいると。」

(例えば 風
 吹き来る風が瞬時に吹き去る風となるように
 言葉は声となった瞬間
 音として虚空へと消え去る)

「ねェ、知ってる。
 私、太ったの2キロも。」

(ビスケットを頬張る環
 食事制限のない病院暮らしで
 2キロしか太れない
 心が太ろうとしないから)

「このごろ恭子 来ないね。」
「遠慮してるのさ。」
「誰に?」
「さァ。」

(例えば 友情
 環が入院したこと知らせてくれて
 一緒にお見舞いについて来てくれて
 そんなこと 数回続いて
 二度と顔を見せなくなった恭子)

「今度 つれてくるよ。」
「何時になったら
 退院できるのかな、私。」

(例えば太陽
 地球の自転なしには
 陽の当たらぬ人々と
 陽の当たる人々とをつくりだす)

「五月になれば退院できるさ。」

(例えば 水平線
 海と空とが まるで
 ひとつに見えるけれど
 海と空 永遠に隔絶された水平線)

「退院したら すぐに学校に戻るのか?」
「その予定だけど・・・」

(・・・だけど
 戻ってみても トコロテン)

「卒業ね、私たち。」
「一体 何から卒業するんだか。」
「温室からよ、きっと。」

(例えば 時計
 長針が秒針をあざ笑う
 お前は同じことばかりしていると
 それを聞いていた短針が
 長針を諭す言葉は五十歩百歩)

「退院したらドライブにでも行こうか?」
「まだ免許取ってないでしょう。」
「あれ、言わなかったっけ五月交付だよ。」
「どうしようかな、病院に逆戻りしたくないし。」
「よしてくれよ、大丈夫だよ。」

(恭子も誘うべきか・・・
 かえって傷つけてしまうかも・・・)

「恭子も一緒でいい?
 あいつの方が運転上手いし。」

(例えば 例えば何だろう
 三辺の長さが 3:4:8の三角形
 それでいいんだ 幼馴染の三人)

「俺 そろそろ帰るよ。」
「今度は二人で来てね。」
「あァ。」

病院の通路
やっと出口までの道順覚えたばかり
やけに出口までが遠い病院
途中で恭子に電話しよう
そう思った



三辺の長さが3:4:8の三角形
二次元空間では無理だけど


画像

エドガー・エンデ

 
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