【それ】第三章「名前のないもの」


言葉が言葉になる前の言葉
【それ】は 自分自身を
そう感じ続ける

現在も過去も未来も
あらゆる空間に あらゆる時間に
あらゆる時空に 存在しえながら
どの時空にも存続しては いない

どの時点かで得たものは
どの時点でも保有する【それ】

【それ】は 確かに
耳と目を宿られながらも
それを駆使しない

桜の根元なる一枚岩 一枚岩に座する者が
「 だが 耳があろうとも 目があろうとも
 真実を聞き分け 真実が見えるわけでもない
 耳をふさぎ 目を閉じ 
 はじめて聞こえ 見えてくるもの
 私はそれを捜している・・・」と言ったように

聞こえるものだけが
真実とは限らなかったし
目に見えるものだけが
真実とは限らなかったから

時空を移ろいながら
【それ】は一層 確信した

【それ】を呼び止めるものは
いろいろいたが
その者たちの多くは
【それ】から与えられることだけを欲するか
いなぬものを押し付けるだけだった

【それ】は あの胎児の夢に
残してきた語彙の種が
萌芽し 良き土壌を得て
大輪の花を咲かせたことを
喜んでいた

しかし 語彙の種が
「ものには それぞれ名前があるんだ」と
少女に気付かせたというわりには
【それ】には 名前がなかった

誰も【それ】に 名前をつけず
【それ】と呼んだから
【それ】は 自分で自分の名前を
つけることもしなかったから

【それ】は 移ろい
【それ】は 移ろいながらも
【それ】は 佇む

姿なき姿を変え 声なき声を変え
何処にでもありまがら 何処にもない
言葉が言葉となる前の言葉として

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【それ】第四章 留まるもの へと続く

【それ】エピローグ

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